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靈樞 營衛生會・衛氣 まとめ

この頁は、「靈樞・營衛生會」を中心にして、營氣と衛氣、そして營氣と同類である三焦の気についてまとめてある。

1. 〔営気と衛気〕
営気 : 身体を営養する…穀物から取り出した気=栄養素
清: 営気…在脈(血管)中…1日50周
濁: 衛気…在脈外…陰を25周⇒夜間…夜半(真夜中)に大會する
陽を25周⇒昼間
営気第16では
≪1 血中に氣、無ければ、則ち周らず、其の氣とは即ち陽氣なり。陽氣は穀氣より生ずるなり≫ ≪2 故に氣は太陰より出で、手の陽明に注ぎ、・・・下つて肺中に注ぎ、復た太陰に出づる。此れ營氣の行る所なり≫ はじめの「氣」は、文末に「此れ營氣の行る所なり」とあるので「營氣」に違いないが、營衛生會18にそって考えれば「衛氣」でなければならない。營氣16には、このような混同が見られる。

2 「老人の夜、瞑らざるは、何れの氣、然ら使む」という、営気・衛氣とは関連のない問題を扱っているので割愛する。

3〔営衛の行る所〕
営…中焦より出づる
衛…下焦より出づる

4-1 〔上焦〕
上焦…胃の上口より出づる→咽に並んで隔を貫き、胸中に布り、腋に走き、太陰の分を      循り、還つて陽明に至り→舌→足陽明に下る (同 霊・經脈)
     常に営と倶に陽を行ること…25度       
           陰を行ること…25度
     陰陽を25度ずつ行ることで1周となり、1周した終りに手の太陰で振り出しにもど     る=大會す
営気第16では
≪1 穀は胃に入りては、乃ち肺に傳はり、中から流溢し、外に布(ひろ)く散る≫

5 人が熱いものを食べた場合、営気として正常の手続きを得ずして汗が出るのは何故かという問題を扱っている。

4-2 〔中焦〕   
中焦…胃中と並び、上焦の後を出づる
・胃の働きと同じく糟粕を泌し、津液を蒸す
⇒精とし、微と化す
⇒肺脈に注ぐ=化して血を作る…血は独り經遂に行る(すなわち営気)
これは身体を生かすものなので「此れより貴きは莫し」ということになる。
営気第16では
≪1 精の專らなる者は、經隧(血管)に行り、常に營(めぐ)りて已むこと無く、終れば復た始む。是を天地の紀と謂ふ≫

6 血と気は同体のものなのに、名称だけ違っているということをどう考えるべきなのかという問題である。
岐伯は「營衛とは精氣なり、血とは神氣なり」と答えている。私の解釈では「営気・衛気とは精の気(食物から抽出したエッセンス)であり、血とは神の気(体内に在って卓越した働きをする気)」ということになる。
ここから霊枢は、奪血した患者(神を失った者)と、奪汗した患者(營衛を失った者)をどう治療するかという問題に発展させている。

4-3 〔下焦〕   
下焦…回腸より別れて膀胱に注ぎ、滲入させる働き
胃中に幷居する水と穀が大腸に下る⇒滲ませて水を下に済(とお)し泌(なが)して、汁を別つ

7 酒を飲んだ時、酒以外の食物がまだ胃中で消化されていないのに、(穀物から作られている)酒だけが先に小便になって出てくるのは何故なのか、という問題である。

4-4 〔三焦のまとめ〕
上焦如霧、中焦如漚(あわ)、下焦如瀆(水の流れ)

 両篇を読めばはっきりするが、「營氣第十六」は、身体をめぐる気をどう考えるかについての試論のような段階にある。胃から取り出された栄養素の血中を廻るものと、血管の外を廻るものの二つを想定して人間の生理を考えようとしたのだが、「栄養素」のほかに身体を動かす「衛気」というものを想定しなければ不足することに後々気がついたのだと思われる※。
また、経脈を考えた時に、「経脈を廻る気」というものも想定しなくてはならなかったし、胃から摂取した食物を栄養素として取り込む際に、三段階に分けて取り込むと考えたので「上・中・下焦の気」というものも想定された。「營氣第十六」では栄養素としての気と、経脈を廻る気とが同一のものとして述べられているのである。
こうした身体に関する多種の「気」を考えだす基礎が、この「營衛生會第十八」にあると思われる。
※衛気については、「衛」の「守る」という義を強く意識してか、生体の防御機構と考える向きが多く、現代の生理学知識にあてはめて免疫システムだと考えられるようになったが、「衛」には後に述べるように「いとなむ」の義もある。それを考えれば「衛気」とは、身体を生活させ、運動させる気であると言える。「営気」は、「血中に含まれる栄養の活力」と「気」に近い考え方ができるが、「衛」を「守る」ととらえた際には、その働きが「免役システム」という即物的な段階にまで引き下げられてしまったというのは、きわめて現代的な見方であると思う。こうした働きも気の仕業だとするのが、素霊時代の生理学なのである。

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